ヲタクやめたい.com

グローバルもいいけど、ちゃんと探せば日本もまだまだ面白いと思うよ

何もかもが思い出になってしまうのならば

      2015/07/13


「はじめまして。姫草ユリ子です。」

それが彼女との初めての会話だったと思う。 肩甲骨くらいまである黒髪を綺麗に整えて、一見おとなしい雰囲気の子だけど、しっかり僕の目を見ていた。

昔から音楽が好きだった僕はよくライブに足を運んだ。 一時はギターを触っていたけどどうもその才能は僕にはないらしい。 だから音楽は聴くだけ。 他に特に趣味のない僕はアルバイトの給料を余らせていたし、ライブの持つ迫力や熱気が大好きだったからよく足を運んでいた。

そして偶然彼女に出会った。


そんなに女の子と遊んだ経験のない僕は少し緊張していて会話はあまり盛り上がらなかった。 確か数十秒程度他愛のない話をした気がする。何しろ僕は若干テンパっていてどれくらい話したかなんて覚えていない。 でも最後に「じゃあまたね」なんて言ってたのは鮮明に覚えてる。 偶然の出会いだったのになぜか再会する確信があった。思い上がりでも妄想でも願望でもなく、確信だった。

時を待たずして僕と姫草さんはまた出会った。 出来過ぎた話に思えるかもしれないけどまた都内のライブハウスで出会ったのだ。

正直姫草さんと会うのをちょっと期待していたから今回は上手く話せたと思う。 今日は非常に良いライブだったとお互い共感し、そして彼女が都内の大学生であること、 彼女もギターを諦めた経験があること、好きな音楽についてそれなりに話した。 僕も姫草さんも同じグループが好きで、好きな音楽ジャンルも近かった。

「もしかしたら今まで話したことがなかっただけでもっと前から会っていたかも。」

いつか彼女はそんなことを言った。 確かにライブハウスには時に何百人もの人が訪れる。もっと意識すればそこらじゅうに偶然の出会いはあったかもしれない。 今まで人と話すのを億劫に感じていたことを少しもったいなかったかなと僕は思う。でもそう思えたのは間違いなく姫草さんのおかげだろう。

それからというもの、ライブを楽しんで終演後に姫草さんと少し話をしてから帰るのが普通になっていた。 僕も彼女も少しずつ打ち解けあって随分とフランクに話すようになったと思う。僕を見て向こうから話しかけてくるようになった。

「テストやばいよー。どうしよう。」 「俺もやばいのについライブ来ちゃったよ。」 「やっぱり息抜きは必要だよね!」 「こんな頻繁に息抜きしてるからテストやばくなるんだよ。」 「それなんですよ。」

そんなくだらない話をしてる時間が幸せだった。 他の人から見れば煮え切らないこの感じが好きだった。 付き合いたいかと言われれば付き合いたい。でも関係が壊れるのが怖かったわけでもなく、それだけで十分だった。 その数分の時間だけで満足できる。それでいいと思っていた。

(中略)

「私は君の思い出の中で生き続けるの。 思い出は風化せず劣化せず、 忘れ去られない限り永遠に残り続けるの。」

だからそれでいいのだと、むしろ今のこの楽しくて幸せな時間が残り続けるからいいのだ、と彼女は笑って言う。

でも思い出の中に生きるのは僕の記憶にある姫草さんだ。 それは思い出である限り永遠に同じ過去を繰り返して、やがて劣化するのではないだろうか。 途中で止まった物語は新しい出会いに塗りつぶされて、やがて消えるのではないだろうか。

僕たちはそれぞれ別々の道を歩いていく。 そして別々の道の途中で同じような偶然の出会いを繰り返して、都合の良い時だけ記憶の中から取り出して「思い出の中で生きるあの人」を懐かしむだけになるのだろう。 それはちょっと寂しいなと思う。 でもそれは僕の願望でしかなくて、彼女の決意に水を差すほどのものではない。

偶然の出会いの物語はここで終わる。 物語は終わることによって完成する。 幕くらいは尾を引かず後腐れなく引きたい。

「姫草さんと出会えて楽しかったよ。これからも頑張ってね!今までありがとう。」

なんか何の面白みのない別れの言葉になってしまったけど、きっとそれくらいがいいのだ。

もしかしたらどこかで再会することがあるかもしれない。 でも2度も偶然の再会をする物語なんて寒いから、ここは綺麗に別れようと思う。 いや、一言お礼が言えただけで十分だ。 どうせ全てが思い出になってしまうのだから、あとはいつか彼女が都合の良い時に記憶の中から取り出してくれればいいのだ。 僕が都合の良い時に記憶の中から思い出として取り出せばいいのだ。 だから長い挨拶なんていらないと思う。だから涙なんて流さなくていいと思う。

そうやって僕たちは別れた。

彼女の思い出を反芻しながら僕は家路につく。 明日からは姫草さんのいない生活が始まる。

これからは偶然の出会いを大切にしていこう。 姫草さんがいなくても僕はきっとライブハウスに通い続けるだろう。 彼女との出会いに少しでも意味を持たせるのなら、偶然の出会いを疎かにしないようにしよう。 そう決意した時、ちょうど家についた。

鍵を開けて家に入る。 たくさんの同じCDが僕を待っていた。

 このブログで書くとオチが30秒でバレるんだよなぁ。

今日というか昨日ですが、アフィリア・サーガのローラ・シュクレーヌが卒業したんですよ。 僕がアフィリアを最初に見たのは彼女が加入して間もない2011年の終わりくらい。 加入のライブじゃないけど偶然別件で来ていて、意識的にアフィリアのライブに足を運び始めたのは2012年の3月だったかな? その時一緒に加入したエミュウちゃん推しだったんですけど、そのエミュウちゃんも結構前に辞めていて…あれ?もう1年半前の出来事!? ってなった時に上のようなものを思いつきました。

アイドルの卒業とかって変に感傷的にならないほうがいいと思う。 経済的な理由にせよ何か新しい道に進むにせよどっちにしても湿っぽくなる理由がないしさっぱりと別れる方がいい。 変に含み持たせたりダラダラ粘着するのってださいじゃん。 粘着することで有名なサーガヲタの、特に痛々しい人たちですら今回の卒業は割とさっぱりしてて、個人的には結構よかったなぁって思いました。

今日月曜日なのがつらいんだよなぁ。

 - アイドル語り