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グローバルもいいけど、ちゃんと探せば日本もまだまだ面白いと思うよ

烏に単は似合わない

   


この前TSUTAYAでCDを借りたついでに目に入った本を衝動買いしたのだが、それが面白かったのでちょっと紹介。

 

阿部智里

烏に単は似合わない

 

情景描写の美しさと世界観設定に沿った細かな言動の表現ながら固くない読みやすい文章。
ファンタジーとも恋愛ものともミステリーとも言えない独特な作品。


直接的なネタバレ(展開や物語の内容)は避けるが、一切のネタバレや説明が嫌な方はこの先読まない方がいいかも。

あとこの記事を真面目な文芸評論だと思わないでほしい。
このブログの名前はヲタクやめたい.com。
そこだけ留意して。頼む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

概要

八咫烏が支配する世界でのお話。
とは言ってもほぼ人間だと考えれば良い。違いは「烏に変身できる」という部分くらい。しかもほとんど人間の姿で話が進む。たまに烏への変身が意味を持つ。
あとは奈良〜平安前期くらいの時代をベースにオリジナル要素を加えてる感じ。
特に情景に関する風情のこだわりはこの時代っぽいものを感じる(和歌みたいな)
とは言え特に前知識なくても読めると思う。僕も和歌とかに詳しくないので魅力を読み取りきれてないかもしれないがそれでも十分だと思う。
今更ジェンダーがどうこうなことを無視して言うと、まさに女性らしい作品

内容としては、東西南北4家の姫が若宮(皇太子のようなもの、第一皇位継承者)に嫁ぐため桜花宮に住み込む。
それぞれの春夏秋冬の名を関する屋敷に住み、各種行事を通して自身を切磋琢磨し、若宮の妻になる(入内する)ことを目指す。(作中ではこのことを「登殿する」と言う)
なんとなく大奥的な「女の紛争」を感じさせる設定だがそんなことはない。主語が「姫が」であり、目標が「入内する」だからそう見えるだけだ。

 

これが若宮視点だったらラブコメである。

 

そう、このお話の読み方の一つは「男一人対女性数人というラブコメ構図を女性が描くとどうなるか」と言えるだろう。
実際ドロドロした陰湿な争いはほとんど出てこない。展開的には比較的さっぱりしている。

大奥的な内部政治というよりも貴族の勢力争いに近い。逆に言えばその当時の姫の話ってそんなにないから面白い。果たして彼女たちはお人形だったのか?

そんな話(でもある)。

 

・東家(春殿)

あせび

赤以外の色を文章につけてみた。見にくかったらすみません。元々は二の姫と呼ばれていた。
姉の病気により急遽桜花宮に来ることになる。物語はあせび視点から始まり、あせびの動きを追っている部分が多い。
まさに「春」というべく、おっとりした柔らかい人物。穏やかで控えめでだがたまに出る抜けた言動が印象的。また箱入り娘で急遽この登殿 が決まったため常識にも疎い。

ぼうっとしている印象が強いが、琴の腕前は達人級であり、美貌が優れていると思われる(控えめな言動のあせび視点のため他のキャラクターの発言より類推)。

日本同様、黒髪超絶ロングを美徳とするこの世界では若干異質な薄茶色の髪であり、これが物語の一つキーである。

アニメで例えるならけいおん!の唯とからき☆すたのつかさ。本書はギャグではないのであそこまで抜けてはいないけど。

 

・南家(夏殿)

浜木綿(はまゆう)

飾らない性格で、おしとやかとか華やかさからは遠い。そして一番大人っぽい。
他の姫と違って若宮を平気で貶す。ついでに他の姫にも挑発的な皮肉を言う。若宮に気に入られようとする努力も伺えない。

※今の若宮は南家と敵対する西家出身の姫(十六夜)から生まれており、南家出身の姫(現・大紫の御前)より生まれた兄宮は事情(すぐわかる事情だが面倒なのでここでは省略)により継承権を義理の弟である若宮に取られている。そういった家の確執がある。

他の姫たちとの宴会には意図的に参加せず、どうもぐうたらしている。
しかしここぞという時には速い頭の回転や高い行動力を示し場の主導権を取る。入内争いに関して達観しているように見える一方、計算高い一面を見せ他人の企みの一枚上手を取る場面もしばしば。政治的な事情にもやたら強い。
何故か夏殿に使える女房たちから評判が悪い。

アニメで例えるならうたわれのカルラとかマジ恋の百代。多分絵的にはかなり近いと思う。

 

Q、夏ならもっと別の色なかったんですか?

物語を読めばわかるけど、赤を使うと変な勘ぐりを入れられる可能性があるのと、旧暦の夏だからちょうど若葉のイメージの方が近いからこんな色にしただけです。

 

・西家(秋殿)

真赭の薄(ますほのすすき)

ラブコメに必ず一人はいる高飛車なお嬢様。
豪華な着物を来て、すぐに宴会を開き、目立ちたがりたまに癇癪を起こす。そう、まさにお嬢様。あれだ、浮かれたお嬢様。
ここまでだとよくいる噛ませ犬だがこのキャラクターは途中で化ける(烏的な意味じゃなく)。
まず意志がまっすぐなのが魅力的。あせびはふわふわしているし、他の姫は意志こそあれどもどこか影のある形で顕現することが多いが、この姫だけはまっすぐなのだ。まっすぐ若宮に恋しているのだ。
その辺のエピソードとか読むとこの姫の評価が一気に変わる。
あせびほどではないがお嬢様キャラにありがちな世間知らずさもある。

アニメで例えるならISのセシリアとかローゼンメイデンの翠星石

 

・北家(冬殿)

白珠(しらたま)

美人というよりは可愛らしい感じと思われる。僕なら「白珠ちゃん!」って言っちゃう感じの姫(なお絵的には完全に想像の模様)
真赭の薄とは対照的に清楚でおしとやかな深窓の令嬢を思わせる。そして全体的にどこか影を感じる言動の描写が特徴的。
北家が家を賭けて送り込んだ姫であり本人にもその自覚が強い。
基本的には静かで感情を表に出さないが、家のために裏で色々動くこともしばしば(あせびに辞退を迫るとか)。

アニメで例えるならまどマギのほむら(途中までの敵状態だったやつ)。他それっぽいの思いつかなかった。

 

前述のように基本あせび視点だが、エピソード的には他の姫の方が充実しておりバランスが取れている。
なので恒常的に小さなエピソードが重なるあせびの説明が薄っぺらいのは勘弁してほしい

他にも宗家とか藤波とか各家の女房とか出てくるけど、基本的に関係はぐちゃぐちゃしてない。最初に構図の把握をすればあとはすんなり行く。

四者四様の姫のうち、若宮は誰を選ぶのか?
これが物語の大本の動機である。

 

感想

あぁ、これは女性が書いたものですわー。

先ほど女性が書いたラブコメという見方も出来ると書いたがまさにその通り。
男の僕が読めば「この姫いいですわー」と、男なんて馬鹿ばっか。好みしか語らない。ヲタクってダメですわ。

しかしいわゆるハーレムラブコメを女性が女性として見るとどう思うか
物語の結末部分で露骨に、僕ですら若干引くほど酷い書き方をされているのだが、

 

女性はどのタイプの女が嫌いか

 

という裏テーマ的なものがあるのだと思ってしまう終盤の展開は見物。
いやこれ絶対作者の主観入ってるでしょ、と思ってしまうくらい露骨な書き方。読み終えて思わず「うわぁ」って言っちゃったくらい酷い。 
後味悪いのが一周してむしろ爽快さすらある。 これは是非読んでほしいね。
僕達ヲタクは「白珠ちゃん!」とか「あせびたそ〜」とか言うだけだが、観測者が変わるとこうも変わるかと思わされる。

作者の阿部智里さんはどのタイプの女が嫌いか
そこも考慮して是非読んでほしい(本当に嫌いかは知らないけど)
とりあえず良いのは読みやすさと世界観。文章が柔らかいし、設定を押し付けてこないのでスラスラ読める。ミステリー要素あるなんて思ってなかったからしっかり読み込まなかったのも理由だけど。
ただ細かいことを気にする人は読まないほうがいいかも。隙のない作りではないと思う。ホントは本としては良くないけど、想像力で補える能力がないとまぁ粗があるのも事実。ところどころふわっとしてたり「ちょっときつくね?」ってところもあるけど、想像力はヲタクの意地の見せ所っすよ。

 

一言で感想を言うと「うわぁ」。

 

シリーズ的な感じになってるから次のやつも読もうと思う。

最後完全なネタバレ(多分見ないほうが良い。どうしても見たい人は反転で見れます。)

 

 

 

 

 

 

壊れる白珠ちゃんが良すぎてやばい。

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