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リレキショ〜僕と姉さんとその女友達と謎の少女〜

      2016/05/09


GWと言っても特にやることがなく、huluやAmazonのプライムビデオを観たり本を読んでた。
もうGWは終わってるんだけどね。

真空管ドールズはログインゲーになった。
普段の僕だったらもう触ることもやめていただろうが、きっと、アプデで、よくなる…よくなるはずさ…。

そんなわけで読んだ本の紹介。
記事タイトルには謎の副題みたいのがあるけど、本自体は「リレキショ」までがタイトル。


中村航の本はたまに読む。
最初に読んだのは「僕の好きな人がよく眠れますように」。すごく綺麗な不倫のイライララブストーリー
次に読んだのは「あのとき始まったことのすべて」。昔の同級生と偶然出会うイライララブストーリー
(読んだのが何年も前だから設定とか怪しい)

要はイライララブストーリーだったのだ。勿論僕がまともな青春時代を送っていればイライラすることはない。
話はふわふわした文章で進む。中村航ワールドとも言うべき。主観的で感覚的な表現で進む文章はすごく読みやすいけど好みは分かれると思う。
難しいことを考えずに読んだまま読めばいいが、ふわっとした感じが嫌いな人はダメかもしれない。

表紙絵が綺麗。

 

で、今回読んだのはリレキショ。

内容としては以下の感じである。端的に感想を言うと、エロゲで見たことある!というやつだ。

 

 

※以下、ネタバレあります。

 

 

 

 

主人公の半沢良(推定19歳)は姉と二人暮らし
当然だが姉と血は繋がっていない

この時点で我々の嗅覚的には「リーチ一発ツモ」といったところ。
よく考えてほしい、「血の繋がっていない妹」なんてもう世の中に溢れかえっているじゃないか(錯乱)
血の繋がっていない姉、っていうと「鬼灯さん家のアネキ」くらいしか出てこない。

姉さんの情報はかなり少ない。
料理が作れることもわかる。仕事をしていることも描写されている。主人公に対して世話焼きであることも伺える一方、主人公の成長を望む姉としての一面も見える。穏やかな人であることもわかる。でもどこかリーダーシップのようなものが発揮されている。
年齢は26〜28歳前後。(「高校の時以来10年ぶり位」)

 

血が繋がっていない理由は、姉さん(本名は半沢橙子だがわかりやすいので姉さんで通す)が主人公を拾ってきたからだ。

故に主人公は自分の正確な年齢や誕生日を知らない。

「弟と暮らすのが夢だったの」

これほどわかりやすい姉ものゲームも珍しい。
エロゲだったらOPムービーの姉さん紹介部分で絶対書かれるやつである。
しかも姉さんはバツイチ。確定感…!(中古異端説は今はナシにしよう)

途中まで読むとわかるのだが主人公が拾われたのは3ヶ月前。
19歳(推定)を拾ってきたのが3ヶ月前
だったら正確な年齢とか誕生日くらいわかるでしょ
この設定を理解した上でもう一度読んでみよう。

姉さん「弟と暮らすのが夢だったの」

意味の深みが違う
離婚した後一人暮らしで19歳(推定)の男を拾ってくるという確定感
鰻を買ってくる役を主人公と決める際は突然首筋に甘噛みするという無防備感。全ての読者はそのまま倒れこむパターンまで見えてるはずなのにそのまま鰻を買いに行く半沢良、無能。

 

次に出てくるのが山崎。姉さんの友達である。
最初、姉さんの恋人(男であると勘違いしそうな表現がされている)っぽく登場するが女。そのせいでどうもよつばとの虎子っぽいイメージしかない。姉さんと同年齢と思われる。
最初に出てくるヒロインの姉さんの設定が濃すぎるせいで相対的にサバサバしているように見えるが、ギターを弾き始めて痛々しい歌を作曲したりと地味に残念キャラ。どちらかと言えば聞き役な立ち回りで、バシッとした意見を言わない。むしろ姉さんや半沢良という謎キャラたちのバックボーンの説明に上手く進行してくれる、比較的クールな進行役。

と思いきや、突然主人公を襲ったり(?)、それに感動して「見事な泣きっぷり」を見せたり、姉さんに報告して公認の仲であろうとするなど、謎のアグレッシブさで後半に存在感を爆上げしてくる。

99%メインヒロインにならないタイプだが、「良いルートだった」と言われるタイプのキャラ。

 

その後に出てくるのが漆原玲子。一浪中の女の子。
ほぼ確定で登場人物では一番若い。

最初に言っておくと、「ほんわかマジキチ」というやつである。
とても正気だとは思えない。

始まりはガソリンスタンドでバイトする主人公に原付の給油が終わった後、突然手紙を渡す。その手紙で「あなたのバイトの様子をいつも見ています」と手紙で告白してくる狂気のキャラ。しかも給油は1リットルに満たず、料金も数十円。給油が狂気の手紙を渡すための口実であることは明らかである。
普通に考えれば脅迫寄りの告白なのだが、久々にヤンデレ属性なキャラクターに出会った僕はちょっと感動してしまった。
普通の書き手だったら漆原玲子はヤンデレ方面担当なのだが、話に闇を持たせないのが中村航ワールド。毎日勉強の合間に双眼鏡で名前も知らぬ主人公の一挙一投足を観察する明確にヤバイ女を”面白不思議美少女(原文ママ)”として描写する。

登場一発目の手紙から相当のヤバさを展開するのだが、2度目のコンタクトも何故か手紙。ここに来て「観察」という表現を使い始め、主人公の生命の危機が危ぶまれる。しかも原付で主人公のガソリンスタンド前を行ったり来たりするだけという監視行為付き。
手紙の内容も漆原玲子の家族事情など一方的としか言いようのない(恋する乙女はそれが普通なのかもしれないが)手紙で、ガソリンスタンドで数回会った程度の一般人では到底理解しようのない内容かつ手紙の意図が不明で恐怖しかない。
姉さんや山崎はこれを「ラブレター」と断定するも、なかなか腑に落ちない主人公。これに関しては主人公が正しく、その現場にいる当人からすれば頭おかしい人からの手紙でしかない
3度目の手紙については、読者すらも気になる主人公の名前、家族構成、性格、趣味などを勝手に想定してくるという超ド級の危険人物。 ヤンデレどころか壊れ人物である。
そして勝手な設定を吐露した後、「デートに行きませんか?」という脅しをつきつける。血の繋がっていない姉と二人暮らししながら何もしないという超鈍感の半沢良でも、これを断るとさすがにヤバイと判断
指定された動作をどこかから双眼鏡で観察する漆原玲子に見せる、それがデートOKの合図なのだが返答はOKしかありえないだろう。

しかもここまでの展開のキモは「漆原玲子はいつもフルフェイスのヘルメットで顔を隠している」点。女性であることは確定なのだが、主人公は顔すら分からない相手に監視・観察され、デートを申し込まれたのだ。危険でしかない。

という、明らかにヤバイ女を”面白不思議美少女”として描いている。パッと読んだだけなら上記のようなイメージはなく、本当に”面白不思議美少女”なのだ。なんなら「いじらしい純愛」という印象すら受ける。しかし客観的に書くと上記のように「狂気の愛」となる。

主人公と漆原玲子のデートはどうなったのか、漆原玲子のヘルメットの下は、それは自分で読んでみてほしい。

 

という3ヒロイン同時攻略型のエロゲシナリオとなっている本作。

実は核となる謎があって、そもそも19歳(推定)で拾われてきた主人公・半沢良とは何者なのか?である。
むしろ3ヒロインとの成り行きよりも気になる部分である。
結論から言うと、本作ではこの謎をぶん投げる。最初から解決する気がなかったのではないかと思えるレベルである。
解決するのは、以前の苗字が星川と思われること、ホッシーと知り合いから呼ばれていたこと、クラス?からは不思議な人間として扱われていたであろうこと、過去に触れると若干主人公が情緒不安定になることくらいしかわからない。

中村航の作品は全体的にこういったミステリー感を演出する。
綺麗な不倫、としか言いようのない「僕の好きな人がよく眠れますように」では相手の結婚環境がよくわからないし、そもそも大学生で結婚て…という疑問。
「あのとき始まったことのすべて」では、イミテーションラブみたいな危うい男女関係と回想中の謎が印象的。

ただ、リレキショでは全部放置しました。ほぼ回収しません!
というかこの話自体テーマをつけるとしたら「これからの自分」みたいな感じだろうし、謎であっても過去の自分なんかどうでもいいじゃないっすか。

腑に落ちない人の気持ちもわかる。
主人公の正体?は物語序盤の最も大きな引きであり、漆原玲子の三枚目の手紙で想像上の主人公が描かれてくるところでその謎に大きく差し掛かる感が出る。
逆に言えばそれだけ。これだけ大きな謎を提起しておいてそこ意外は主人公の正体がキーになる部分はあまりなく、何なら昔の知り合いと再会する場面ですらサラッと流れる。

では何故主人公の正体を謎にする必要があったのか?
別に「姉さんの弟の半沢良」でもストーリー上ほとんど問題ない。昔の知り合いとの再会はいじめられてたとかクラスで浮いてた設定でどうにでもなるし、漆原玲子の3枚目の手紙もただの妄想少女でしかなくなるという程度。
あとは山崎による姉さんの過去語りが不自然になるが、これはいくらでも書きようはある。

では何故主人公の正体が謎なのか、と言われれば答えは一つで、

そうしなければ1ヒロインとしての”血の繋がっていない姉”が成立しなくなる

からである。
19歳で血の繋がっていない姉、という設定は実は結構難しい。
何故なら姉さんと主人公が血の繋がりがないことを知りながら3ヒロインの重さを均等にすることは、「長年一緒に過ごしてきた」があると邪魔なのだ。

つまり「3ヶ月前に拾ってきた」という期間の浅さが重要になってくる。これにより、「血の繋がっていない姉」「19歳(推定)」「心情的に姉さんに偏らない」という3つを同時に成し遂げることと相成る。
また、日の浅さが姉さんに関する客観的描写(年齢とか)の少なさを許容させる。これにより情報は主人公の主観的な「世話好きの女の人」と山崎の思い出話による「実は行動力のすごい女の人」という説明しかなされない。そして僕たちは都合の良い姉(血が繋がってない)を想像できる。。しかしこれは僕の中では副次的なものでしかなく、やっぱり血の繋がらない姉って、きっと、素晴らしいのだ。
主人公の不可解な設定は血の繋がらない姉を成立させるための道具、それでいいじゃないか。もやっとはするけど。

でも普通に考えて、19歳くらいの男がバツイチのOL女に恋愛感情なく二人暮らししているシチュエーションなんてまず不可能じゃないですか。
その成り行きをグダグダ説明されるくらいなら主人公謎設定でもいいと思いません?

主人公の設定を生け贄に「血の繋がらない姉」を召喚。こう考えたらコストパフォーマンスに優れた技法だと思えるじゃん。

主人公の設定

設定がガバガバというより、意図して穴を開けてるという印象。
色んな情報から推測していかないといけない。
しかし情報を集めれば集めるほど怖い想像しか浮かばない。

知人が「一年ぶり以上」に再会
特別仲の良い友達はいない→みんなの人の推測が適当(アメリカや北海道やオーストラリア)。深い関係にあった人の意見がない(特別な親友がいればその人についての話があるはず。悲しんでたとか)。一年ぶり以上に会った知人が少し話して帰る程度の軽さ。
アダ名で呼ばれている程度の仲ではあり「また連絡しろよ」という心配が寄せられることから、イジメとかではなかったと推測される。
恐らく勝手に主人公が消えた。
恐らく大学に入った→「歓迎会」とやらに問題があったとされるやりとり(新歓?)。「学生やってるの?」という学生であることが前提の質問(高校卒業なら「進路どうしたの?大学に進んだの?」が適切な質問。高校の途中なら「学校どうしたの?行ってるの?」が適切な質問。「学生をする」という表現は大学だけじゃないだろうか)。なので19歳は作中だと推定扱いだが、本当に19歳前後だと思われる(初めて酒で酔った描写もある)。また「アメリカに留学している」「いやオーストラリアだ」という広範な活動範囲の推測がなされているのは、中学校卒業後の進路推測としては考え難い。
「怒っているわけではない」が、何か人生をやり直したい(名前や経歴を捨てたい)レベルでの出来事があった。→知人との再会の後、ホッシーと自分が違う人間である、との描写がある。知人との会話とここが異常に不自然なため主人公がそう考えていると読むしかない。

ここから逆に
過去にトラウマのようなものがある(情緒不安定になる)
大学か何かのコミュニティから消えてから姉さんに拾われるまで1年くらいが空白。
明らかに警察などから捜索されていない。
元々は実家暮らしではなく、大学のために上京?

以上のこともわかる。というかこれしかわからない。

このような青年男性を「拾う」姉さん。ちょっと色々と怖くない?
他に怖いのが、

「僕」(主人公の一人称)がお守りに祈る内容。
「半沢良に御利益がありますように」。
これは自分に祈る表現ではない。

漆原玲子の呼び方。
主人公は漆原玲子を「ウルシバラ」と呼ぶ。主人公の人柄に呼び捨てが異常にミスマッチ。カタカナで呼ぶ理由は読めばわかるのだが、何故か漆原玲子だけ呼び捨てで呼ばれる。これは単に自分より年下だから(登場人物では漆原玲子だけ年下)という理由かもしれないが、ミスマッチ感がひどくて意図を勘ぐってしまう。

40歳の人間に「学生ですか?」と聞く。
しかもその後「40歳で学生はないだろ。」と言われ「そうなんですか?」と返すあたり、宇宙人か何かかもしれないと思ってしまう。

灰皿を買ってきてほしいという要望に対して、28000円の灰皿を買ってくるというヤバさ。
その後の姉さんの「あんた大丈夫なの?」という表現。他では「良君」という呼び方をする分、突き放した感じがどこか怖い。

ところどころ想像すると怖さというかアンバランスさがある。
結局主人公の過去については明かされず謎のままで終わる。変な深読みをせずに簡単に読んだほうがいいのだろう。

 

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